青い花の国

青い花の国

フランシス・ホジソン・バーネット/著
島口知也/訳

あらすじ

生後すぐに王宮から連れ出され、王となるべき運命を知らされぬまま、人里離れた岩山の城で育った自然児アモール。

山の上で、ひとの悪意や敵意を知らぬまま、たくましく、凛々しく成長したアモールは二十歳のとき、ついに山をおりて王都へと向かう。しかし、王となった彼に待ち受けていたのは、恐れや憎しみにとらわれた民衆たちだった。

新たな国王の不可解な行動に人びとが不信感を募らせるなか、奇妙な法が定められたという噂が立つ。それから間もなくして、不思議なことが国中で起こり始める……

作品の解説

Frances Hodgson Burnett

『青い花の国』は、『小公女』『秘密の花園』などの児童文学作品で知られるバーネットによる短編小説で、1904年に発表されました。

米国で人気作家としての地位を確立していたバーネットはそのころ、祖国英国のケント州にある立派な大邸宅に住んでいました。「グレート・メイサム・ホール」というそのお屋敷には、壁に囲まれた庭園もあればバラ園もあり、バーネットはそこで作品をいくつも書き上げ、また1911年に発表することになる『秘密の花園』の着想も得ていたそうです。

そんな環境を創作の場に選んだバーネットの世界観は、この物語からもありありと感じ取ることができます。「壁に囲まれた庭園」「秘密の庭園」といったキーワードが登場したり、花を育てることが物語のなかで重要な意味を持っていたりするのですが、『青い花の国』は『秘密の花園』とは異なり、童話調に語られた昔話といった趣の作品です。

昔話のような、明快なストーリーであるだけに、著者が作品に込めたメッセージも歯切れよく、ストレートに表れています。児童だけに向けた話だと言い切ってしまうには惜しい、万人に訴えうる不思議な面白さを秘めています。

青い花の国
青い花の国
フランシス・ホジソン・バーネット/著
島口知也/訳
200 円(税込み)